インサイド・ルーウィン・デイヴィス-名もなき男の歌-

インサイド・ルーウィン・デイヴィス-名もなき男の歌-

感想・レビュー

原題:Inside Llewyn Davis
2013/アメリカ 上映時間104分
監督:ジョエル・コーエン,イーサン・コーエン
製作スコット・ルーディン,ジョエル・コーエン,イーサン・コーエン
製作総指揮:ロバート・グラフ
脚本:ジョエル・コーエン,イーサン・コーエン
撮影:ブリュノ・デルボネル
美術:ジェス・ゴンコール
衣装:メアリー・ゾフレス
音楽:T=ボーン・バーネット,マーカス・マムフォード

キャスト
オスカー・アイザック:ルーウィン・デイヴィス
キャリー・マリガン:ジーン・バーキー
ジョン・グッドマン:ローランド・ターナー
ギャレット・ヘドランド:ジョニー・ファイヴ
F・マーレイ・エイブラハム:バド・グロスマン
ジャスティン・ティンバーレイ:クジム・バーキー
スターク・サンズ:トロイ・ネルソン
アダム・ドライバー:アル・コー

[あらすじ]
1960年代のフォークシーンを代表するミュージシャン、デイブ・バン・ロンクの生涯を下敷きに、売れない若手フォークシンガーの1週間をユーモラスに描いた。60年代の冬のニューヨーク。シンガーソングライターのルーウィンは、ライブハウスで歌い続けながらも、なかなか売れることができずにいた。音楽で食べていくことをあきらめかけていたが、それでも友人たちの助けを借り、なんとか日々を送っていく。(以上、映画.comより)

こちらが予告編↓

[評価]

■脚本:9
■演出:9
■キャスンティング:8
■この映画えらい度:8
■好き度:10
■期待値とのギャップ:9
■総合:9

89

/100

この映画…好き…!!
何が好きって予告編の始まり方からぐっと引き込まれました。


 

beep

(呼び鈴)

J:yeah?

(何?)

L:hey, its’ me, Llewyn.

(ルーウィンだ)

J:yeah???

(それで???)

L:can i come up?

(入れてくれ)

J:NO!

(お断り)


オスカー・アイザック演じるルーウィンが、さも当然のように家に来るんですが、それをきっぱり断られる…面食らったルーウィンが最高に情けなくて、でも放っておけなくて、一瞬で大好きになる予告。
また言葉数も少なく顔さえ出ていないのに、キャリーマリガンがいい味出してるんですよね。。。もー大好き。

私はもともとアコースティックギターの効いた音楽が好きで、昔はYUIとかコブクロとかをよく聞いていたもんです。。。
今でも緩やかな流れの心に染み入るような音楽が大好きで、でもなかなかいい曲は見つからず悩んでいたところに、

ドンッ!

予告編で素敵なフォークソングが流れてきたというわけです。即iTunesで検索、Amazonで購入。しかしこれまでほとんど聞いたことがなかったフォークソングというジャンル。それは確実に衰退してしまったということなのでしょうね…

-フォークソングが生きた時代-

この映画は「グリニッチ・ヴィレッジにフォークが響いていた頃」(早川書房・真崎義博訳)という本が原作です。1960年代、デイヴ・ヴァン・ロンクはニューヨークのフォーク音楽の中心人物のひとりとして活躍していました。そんな彼の回想録で、懐かしい人にはきっと懐かしい。この映画のタイトルの元にもなっているのでしょう、実際にInside Dave Van Ronkというアルバムが出されています。
insidevaninsideruwin

フォークソングとは、フォーク・ロックやロックのように電気楽器を使わずに、アコースティックギターやバンジョーなどを使った演奏が伝統的で、ビートルズなどのイギリスからの音楽の流れを受けて、ロックの音楽編成で演奏するようになる1960年代までは主流な音楽ジャンルでありました。そんな時代に生きる、才能はあるが信念が強すぎて売れることができないさえないミュージシャン、ルーウィン・デイヴィスにスポットを当てたのが「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」です。
insideruin1
脚本は『ノー・カントリー』『ブリッジ・オブ・スパイ』などを手がけたコーエン兄弟。(大好き)第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、審査員特別グランプリを獲得、第86回アカデミー賞には撮影賞と録音賞にノミネートされ、第71回ゴールデングローブ賞には作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を含む3部門にノミネートされるなど大変な高評価を受けています。回想録を元に全く新しいストーリーを描き出す。あくまでフィクション、当時を知る人や、フォーク歌手からは『こんな生易しいものじゃない』『ルーウィンは恵まれている方だ』など批評はあるものの、私たちいち鑑賞客としては「見たかった当時の風景」が詰め込まれていると思います。それが事実とは少し違かったとしても、限りなく史実通りで苦しすぎない、コーエン兄弟らしいユーモアもたっぷり感じられるこの作品は映画としての出来は完璧だと言っても過言ではないと思います。それにまともなコートもなく真冬のニューヨークを歩くルーウィンは十分不憫でしたしね…
inside

-猫映画としての素晴らしさ-

ルーウィンは、友人のマンションに居候しています。お礼の手紙をメモに書いて、マンションを出ようとしたとき、飼っている猫が飛び出してして。。。追いかけて外に出た瞬間後ろでオートロックのドアが閉まるのでした。
(閉まった瞬間のオスカー・アイザックの顔がまた良い)

やむなく、猫を抱いて、地下鉄に乗るルーウィン。電車の窓から外を眺める猫がとっても可愛くて、ギターと猫で両手がふさがっちゃってるルーウィンもまた愛らしいのです。
lead_large

この映画が退屈じゃないことの理由の一つに確実に「猫」が挙げられると思います。孕ませてしまったジーンと真剣なお話の最中にも「あ!猫だ!ちょっとタイム!」的なノリで走り出して行っちゃうし、見つけたかと思えば別の猫で、結局その猫と一緒に行動することになったり。仕方なく抱えているはずの猫にやたら愛情を注いじゃうルーウィン。ジーンにも言われる「いいヤツだけど、ダメなヤツ」感が猫を通してもだだ漏れです。

-何も思い通りにいかない、それが常-

ルーウィン自身、歌もギターも才能はそこそこ。日々の生活費を稼ぐだけの力は十分で、機会も幾度と訪れるのです。ただ技術だけでいわゆる「光るもの」がない…ソロが信念のかれは、必死に自分を売り込もうと、凍てつく冬のアメリカを渡りシカゴまで来ます。大物プロデューサー、グロスマン(F・マーレイ・エイブラハム)のオーディションを受けますが「金の匂いがしない」と一蹴。男女3人のグループのコーラスとしてならどうか?と言われるが、ソロが主義のルーウィンはもちろんきっぱり断るのでした。
llewyn2
これがいいのか悪いのか。信念を強く持つことで、コートのない冬を過ごし、ジーンからは「負け犬」と罵倒されるのです。この映画のリアリティこそコーエン兄弟の味のように感じます。信念が成功に導くストーリーは多くありますが、この映画はそれを成し遂げられない多くの人に共感します。必死に渡った道の先で味わった絶望。家に帰っても感じるのは時代の変化という疎外感。夢はいつまでも夢でしかなかったと感じ始めて、周りに怒りをぶつけても、きっちりと自分に返ってきてしまう。痛みだけが蓄積し時に嫌になってしまうのですが、やはりルーウィンには歌しかないのです。確実に変化の時が訪れているルーウィンに私たちが見るのは悲劇か、喜劇か。多くの人が共感し、笑い、歌に心揺さぶられること間違いなしの名作です。もし行き詰まっているのなら一度、ルーウィンの一週間を覗いてみてはいかがでしょうか?
これからも映画界を賑わせること間違いなしのコーエン兄弟作品オススメの一本です。是非に。

グリニッチ・ヴィレッジにフォークが響いていた頃―デイヴ・ヴァン・ロンク回想録
グリニッチ・ヴィレッジにフォークが響いていた頃―デイヴ・ヴァン・ロンク回想録


映画ランキングへ

You may also like

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。