サンドラの週末

サンドラの週末

感想・レビュー

人の優しさに触れるとき、それは自分の優しさに気づく瞬間でもある

原題:Deux jours, une nuit
2014/ベルギー・フランス・イタリア合作 上映時間95分

スタッフ
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌリュック・ダルデンヌ
製作:ジャン=ピエール・ダルデンヌリュック・ダルデンヌドゥニ・フロイド

キャスト
マリオン・コティヤール:サンドラ
ファブリツィオ・ロンジョーネ:マニュ
オリビエ・グルメ:ジャン=マルク
モルガン・マリンヌ:シャルリー
ピリ・グロワーヌ:エステル

[あらすじ]
サンドラは飲食店で働く夫と、二人の子供と暮らしています。もともと裕福な家庭ではないのに加え、サンドラは体調が優れなかったため、少しの間工場の仕事を休職していました。ついに復職を果たそうとしていたその時、携帯の着信音とともに映画が始まります。平穏な朝、突然解雇を告げられたサンドラは唯一の条件として、社員の過半数がボーナスを諦めることが提示されました。つまり、サンドラ一人の復職のため、彼女同様日々の生活もギリギリの同僚に「ボーナスを諦めてくれ」と頼まなくてはならなければならないのです。それぞれにそれぞれの人生があり、ボーナスが必要なワケがある。そんな彼らに犠牲になってもらうことで会社に復帰したとして、今まで通り働けるのでしょうか?社員は全員で16人、月曜日の投票日までの2日間同僚たちを説得して回る、短くも永いサンドラの「週末」が始まるのです。

こちらが予告編↓

[評価]

■脚本:8
■演出:7
■キャスンティング:8
■この映画えらい度:6
■好き度:9
■期待値とのギャップ:9
■総合:8

79点

/100

-彼女と会社のバックグラウンド-

彼女が働く会社は今のグローバル化の波に飲み込まれまいと、小さいながら苦労している会社です。そんな会社が最低コストで会社を回そうとするのはある意味当然でしょう。人員削減、給料減額にボーナスカット。そんなことがよく聞かれる昨今では社員一人の解雇など特に珍しくもありません。さらに、サンドラが休職したことで実際に16人で仕事を回すことができると証明してしまいました。そうして出した結果が、サンドラの解雇。そこにリアルがあることでこの映画の説得力は一層ますのです。
サンドラに関しても問題は山積みです。念願のマイホームを買ったばかりで、これからローンの返済が待っている。夫も高所得者というわけでもない彼女が職を失うことは絶対にできないのです。しかしながら今の今まで休職をしていたことが負い目となり、より一層ボーナスを諦めてくれとは言いづらい、そんな状況に置かれているのが、サンドラなのです。

-監督・キャスト-

監督・脚本・制作 ジャン=ピエール&ジャック・ダルデンス

この映画の監督・脚本・制作を務めるのはダルデンス兄弟です。兄のジャン=ピエールは舞台演出家を目指してブリュッセルへ移り、そこで演劇界、映画界で活躍していた人物と出会います。ふたりはしばらく彼の元で多くを学び、影響を受けながら映画の制作を手伝っていました。その後、生まれた土地が工業地帯であったこともあり、土地整備や都市計画の問題を描くドキュメンタリー作品の製作をはじめま、ドキュメンタリー製作会社「Derives」も設立。そうして多くのドキュメンタリー映画の作製に取り組んだ彼らの新作が「サンドラの週末」。ドキュメンタリーを得意とする彼らの持ち味を最大限に生かしたフィクションであります。だからこそ本作は、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に異例の6作品連続の出品を遂げました。

―サンドラの週末はどのように生まれたのでしょうか。(インタビュー)-

リュック・ダルデンヌ(以下L):ヨーロッパが今直面している経済的、社会的危機からです。数年前から、同僚たちの多数決で解雇されそうになっている人物についての映画を考えていました。『サンドラの週末』は、逆境にあって結束する夫婦、サンドラとマニュを思いついた時に本当の意味で生まれたのです。

ジャン=ピエール・ダルデンヌ(以下、J-P):私たちにとって重要だったのは、「弱いから」「十分な働きがないから」と言って誰かが排除される事態を示すことでした。この映画は、そんな「働きのない人」への応援歌です。彼女は夫と共に戦うことを通して、勇気と力を取り戻すのです。
出典:www.bitters.co.jp

マリオン・コティヤール

フランス、パリ生まれの女優で、2003年、ティム・バートン監督の「ビッグ・フィッシュ」にてハリウッドデビューを果たしました。また数多くの受賞歴を持ち、2007年、オリヴィエ・ダアン監督のフランス制作映画『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』で第80回アカデミー賞主演女優賞受賞。フランス人女優の演技部門でのアカデミー賞受賞は49年ぶり、史上2人目の快挙です。他にも、セザール賞、ゴールデングローブ賞などを受賞している演技派の女優です。最近では、「インセプション」や「ダークナイト/ライジング」などクリストファー・ノーラン監督の作品にも多く出演しています。また、最近では「リトル・プリンス/星の王子様と私」でバラの花として声の出演もしています。
フランス文化に対する貢献を評価され、フランス芸術文化勲章を授与されました。さらに「世界でもっとも美しい顔2013」というランキングで数多くいる女優、モデル、アーティストなどを抑え第1位に選ばれています。

ファブリツィオ・ロンジョーネ

1973年3月3日、イタリア人両親のもとにベルギー・ブリュッセルで生まれる。ベルギー、フランス、イタリアをまたにかけ、映画、舞台、テレビで活躍している。99年、『ロゼッタ』のリケ役でデビューし、その後も『ある子供』(05)、『ロルナの祈り』(09)、『少年と自転車』(12)などダルデンヌ監督作品に出演。ポーリン・エティエンヌ、イザベル・ユペールと共演した、哲学者ディドロが1760年に執筆した「修道女」原作“La religieuse”(13/ギョーム・ニクルー監督)、ドイツ占領下にあったフランスのとある村を描いた、6年以上続くテレビドラマシリーズ”Un village français”(09-) にレギュラー出演している。05年、ニコラ・デ・ボーマン、サミュエル・ティルマンらと共に、映画・舞台制作会社Eklektik Productionsを設立した。
出典:www.bitters.co.jp

今作「サンドラの週末」では妻を愛し、常にそばで支える優しさの溢れる夫を演じた彼。日本公開の映画ではあまり名前を聞きませんが、出演作の評価はどれも高く、もちろん今作でも素晴らしい演技を見せてくれました。夫、マニュ役のファブリツィオが絶望に打ちのめされるサンドラを励ますシーンには心を打たれます。

マニュは週末に投票を考え直し、彼女がもう一度雇用されるよう同僚を説得しに行けとサンドラに促します。彼の役割はきわめて重要ですね。

J-P:マニュはサンドラの「コーチ」のような存在です。彼は、可能性はあるのだ、同僚に意見を変えさせることは可能なんだ、と納得させるに至るのです。

L:同僚たちはサンドラに不利な投票をしますが、そのことでサンドラが同僚にやましい思いをさせたり、彼らを非難する犠牲者のように見えてはならないと思いました。これは“悪い奴ら”と“可哀想な女性”の戦いではないのですから!
出典:www.bitters.co.jp

国内外から絶賛の嵐!

この映画の素晴らしさは万国共通、誰にでも共感できて刺さるものがあります。だからこそ日本の著名人を始め、海外誌も多くの拍手を送っています。

特殊効果の一切ない、慎ましやかな作品なのに、
『サンドラの週末』は、はらわたへハンマーの一撃を食らわせ、
平手打ちで感覚を目覚めさせる。
──リベラシオン
出典:www.bitters.co.jp

ドラマティックな展開はなく、淡々と物語は進むのに、
物語が転換を迎えるたびに静かに心を揺さぶられる。
マリオン・コティヤール史上、最良の仕事だ。
──ザ・ワイアー
出典:www.bitters.co.jp

この映画は教えてくれる──
どんな時でも誇りを保つこと、人と人の絆、
誰もがひとりではないこと、他人をどう受け入れるか……。
そのダルデンヌ兄弟の確信こそが、
『サンドラの週末』をこんなにも感動的な作品にしている。
この映画を見た後では、なぜ自分はもう少しやれないのかと恥ずかしい思いに駆られる。
──ハフィントン・ポスト
出典:www.bitters.co.jp

-感想・まとめ-

この映画を構成するのはサンドラの説得シーンです。当然彼女が話すことは同じ内容、「私の復職かあなたのボーナス、どちらかを選べって話。ボーナスを諦めて欲しいの」単調なシーンが続くのですが、気づけば映画は終わってしまう、一瞬たりともだれることのない衝撃の作品です。鑑賞中、ずっと考えさせられるのは、「自分ならどう説得するか、もっとうまくやれるんじゃないか?」ということです。サンドラは常に「これは誰の責任でもない、でも私は失業する。立場を考えてみて?」と強気な態度で説得を進めますが、これがいいのか悪いのか。もっと下手に回っての説得を進めたくなった自分は日本人的なのだなとも感じました。最善の方法を探りながらの鑑賞時間は、ただの娯楽なんかではなく人生で役に立つ思考時間になり得るのです。
そして、私の心に一番心残ったのは「人の優しさに触れるとき、それは自分の優しさに気づく瞬間でもある」ということでした。自分が辛い時、時にその苦難から救ってくれるのは、過去の自分の行いなのです。それに気づけただけでも、この映画の重要性は大いに増しました。
現在はDVDの販売も開始されておりますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。

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