ドローン・オブ・ウォー

ドローン・オブ・ウォー

感想・レビュー

戦場に居ない、直接的な行為じゃないからこそより残虐になる。

原題:Good Kill
2014/アメリカ 上映時間104分

スタッフ
監督:アンドリュー・ニコル
製作:ニコラス・シャルティエゼブ・フォアマンマーク・アミン
製作総指揮:パトリック・ニュウォール

キャスト
イーサン・ホーク:トミー・イーガン
ブルース・グリーン:ウッドジョンズ
ゾーイ・クラビッツ:スアレス
ジェイク・アベル:ジマー
ジャニュアリー・ジョーンズ:モリー

[あらすじ]
「ガタカ」のアンドリュー・ニコル監督とイーサン・ホークが再びタッグを組み、無人戦闘機ドローンにより、戦地に行かずして空爆を行う現代の戦争の実態と、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しめられるドローン操縦士の異常な日常をリアルに描く。アメリカ空軍のトミー・イーガン少佐の赴任地は、美しい妻とふたりの子どもと暮らす住宅街のマイホームから車を走らせ、歓楽街を抜けた場所にあるラスベガスの基地に設置されたコンテナの中にあった。そこで無人機ドローンを遠隔操作し、1万キロ以上離れた異国をクリック1つで空爆をする。ゲームのような現実感のない戦場と家族の待つ家との往復、それがイーガンの日常であり、異常ともいえる現代の戦争の姿だった。(以上、映画.comより)

[評価]

■脚本:7
■演出:6
■キャスンティング:7
■この映画えらい度:5
■好き度:8
■期待値とのギャップ:7
■総合:8

68点

/100

『2001年の9.11以降 米軍は対テロ戦争に攻撃型無人機を使用。これは”標的殺人”が最も激化した2010年の物語である。事実に基づいている』
導入部分に映されるこのメッセージは、決して全てがフィクションではないことをしっかりと示している。

今回は感想、考察多めです。詳細は記載していませんが、ストーリーラストに触れていますので、未見でクリーンな状態で見たい方は読まないでください!

-感想「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャーと本質は同じ話だ」-

無人機による攻撃というのは、味方の人的被害が出ない安全な上空3000mから、危険だと思われる人物を抹殺する事である。
これをわかりやすく簡潔に描いたのが「キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー」である。対テロ作戦として計画されていた「インサイト計画」。これは、アルゴリズムによって国の危機になりうる人物を事前に抹殺するという計画だった。上空から一瞬で行われるプロジェクト・インサイト。安全のための作戦は平和への一歩などではなく恐怖でしかないとキャップが反旗をひるがえすというのが大まかなあらすじだ。これはまさに「ドローン・オブ・ウォー」に通ずるところがある。本作ではCIAが指揮をとることになるのだが、彼らは容赦しない。攻撃目標の周辺に民間人、女子供がいようとも国への危機排除を絶対としているのでやむを得ない犠牲として即座に首をたてにふる。それを必要悪と認めるのか、愚行だと意義を唱えるのか、それを問うのが「ドローン・オブ・ウォー」
印象的だったセリフがある。ある任務で爆破した住居の近くに、たまたま子供が2人来てしまう。爆風で吹き飛んだ子供たちはもう二度と動くことはなかった。その任務でミサイルのスイッチを押した本人、主人公トミーを諭す上官の言葉だ。「子供があそこにいることなんて予想出来なかった。ヤツら(9.11のテロリストたち)はビルの中に子供がいるのもわかっててやったが、お前は違う。」この言葉に少しでも説得力を感じてしまうのが人間。敵対する脅威に対しては判断が甘くなってしまう。

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テロ対策の強化を突き詰めると、驚異の事前排除になってしまう。それが今は行われていないと信じたいが、絶対にないとは言い切れない。そして目視は難しい遥上空から監視できる無人機、ドローンはいつどこで誰を監視しているかわからない。だからこそ怖いのだ。確固たる正義感を持つ兵士でも、上官の指示にはなかなか逆らえない。

この世に完全なる正義は存在するのか。

そして、

その正義は本当に人々を守れるのだろうか?

そんな事を考えさせられる作品だった。

-感想・考察-

戦地に赴かないことで起こる弊害は数知れないと思う。PTSD(心的外傷後ストレス障害)になるまでの期間は短くなり、確率は高くなるのではないだろうか…?スイッチ一つで確実に、そして安全に祖国の敵を殺すことが可能になった現代で、その技術は

本来人間が監視できる範囲以上のものを見せる。

その文明の理は時に味方の安全確保に役立つが、娯楽にあふれるベガスの基地で椅子に座ったまま人を殺す兵士にとってはあまりにも辛すぎる現実でもある。

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祖国のために働く米兵だからといって、あまりの横暴な作戦には当然疑問を抱く。ただ上官を、ひいては国を信じようという気持ちは時に善悪のラインを曖昧にしてしまうのだ。そして自己の正義と、国に求められる正義とのギャップに悩み苦しむ、この映画ではそんな姿が描かれる。
そして何よりも問題なのは、米軍がドローンによる抹殺を行うことで起きたテロもあるという事だ。

国を守るためだったはずの攻撃が、新たなテロを生んでいるのだ。

だからと言って攻撃をやめればテロが終わるかといったら勿論そうでもない。このループは無限で、答えは簡単には出ないし、一生出ないのかもしれない。だからこそ主人公トミーが選んだ最後の正義は、テロとは全く関係のないように見えるところで起きていた暴行への制裁だったのではないだろうか。それだけは確実に悪であったことは間違いはなかったし、その悪魔を抹殺する事で確実に助かる人がいたのだ。しかし、長らく続いた悪夢から救われたその人は果たしてアメリカに感謝するのだろうか?いや、きっと恐れるだけだろう。

力による正義はどこまでいっても恐怖にしかなり得ないのだ。

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現地に赴いて戦った時代とは違って、安全に確実な攻撃が可能になった。リスクが減ったからこそ、わずかな情報でも攻撃ができる。味方の犠牲がないというのはある種無敵で、たとえ情報が罠だったとしてもなんの問題もなくなったのだ。ただボタンを押す、それだけで情報が正しくとも、間違っていたとしても全てが解決してしまう。この現実が明るみに出た事で、

核ミサイルを保有している事よりもはるかに身近な脅威になった。

これは果たして偶然か、はたまた軍による策略か。少なくとも、核ミサイルよりも正確にターゲットを抹殺(Good Kill)できるのだ。

「戦争はダメだ」という安易な結論には至らない、しかし「戦争は仕方ない」という考えにもいたらない。この映画を見終わった時、戦争というものへの考え方はそれほど変化しなかった。あくまで中立というか、一人の人間、またアメリカという国自体が変わったとしても世界自体は変わりっこないという絶望を目の前に映された。すっきりとしないラストも実話ベースの映画らしい作品だった。レンタルが開始しているので是非。

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