「ボーダー・ライン」公開記念!ドゥニ・ビルヌーブ特集『複製された男』感想&解説

複製された男

感想・レビュー

-見逃すな、キーアイテムはサングラスと時計!-

[評価]

■脚本:3
■演出:4
■キャスンティング:7
■この映画えらい度:3
■好き度:8
■期待値とのギャップ:5
■総合:8

54

/100

原題:Enemy
2013/カナダ・スペイン合作 上映時間90分

スタッフ
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
製作:ニブ・フィッチマンM・A・ファウラ
製作総指揮:フランソワ・イベルネルキャメロン・マクラッケン

キャスト
ジェイク・ギレンホール:アダム/アンソニー
メラニー・ロラン:メアリー
サラ・ガドンヘレン
イザベラ・ロッセリーニ:キャロライン
ジョシュ・ピース:学校の先生

[あらすじ]
自分と瓜二つの人物の存在を知ってしまったことから、アイデンティティーが失われていく男の姿を描いたミステリー。大学の歴史講師アダムは、DVDでなにげなく鑑賞した映画の中に自分とそっくりの端役の俳優を発見する。驚いたアダムは、取り憑かれたようにその俳優アンソニーの居場所を突き止め、気づかれないよう監視するが、その後2人は対面し、顔、声、体格に加え生年月日も同じ、更には後天的にできた傷までもが同じ位置にあることを知る。やがて2人はそれぞれの恋人と妻を巻き込み、想像を絶する運命をたどる。(以上、映画.comより)

こちらが予告編↓

『カオスとは未解読の秩序である』この映画はこの一文から始まる。すでに訳わかんない映画臭がプンプンで…確かに鑑賞後の「なんじゃこりゃ」感はえげつなかった。しかし、「複製された男」は解釈がさっぱりわからない多くの映画とは違い、ある種文学のように深く考察できる。だからこそ何度も見てしまうし、見るたびに好きになる。

日本での評価はあまり良くなかったみたいだが、IMDbでは6.9、 Rotten Tomatoesでは75%とそこそこの評価。ただ、監督からの解説も少なく、独自で解釈するしかないというのは幾分かムリやりな映画だ。時間をかけてじっくり見ていくとあるキーアイテムが解釈を助けてくれたり、さらに謎を呼んだりとすごく面白い映画だった。

タイトルから連想するのはクローン人間、または全く同じ人間が存在するという「世にも奇妙な物語」展開。果たして自分と瓜二つの彼は何者なのか?セリフの一字一句、画面に映る数字や流れる音楽まで、すべてに意味があるように感じるこの映画の感想と独自の解釈、解説です。

ネタバレを含むので鑑賞後にご覧ください。

-アダムとアンソニーは同一人物-


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簡潔に言ってしまえば、二人は同じ人物です。浮気をする男の本当の家庭と遊びの恋の、二つの生活を持つ男の話なのです。ただ、本人はそれを自覚していないようなので、「二重人格」と言ったところでしょう。

これは私の勝手な解釈なんですが、アダムは本当の人格だと思います。ラストで涙を流しているのが彼自身。役者のアンソニーは欲望が産み出したちょっとクールな遊び人。しかし、映画が三本も取られていて知人もその話をしているところを見ると、実際にアンソニーは存在したのでしょう。つまり、妻が妊娠するより前、もしかしたらおつきあいをするよりも以前から役者として活動してた。。。三流の末端の役しかもらえない彼は、妻の妊娠とともに歴史の教師に本腰を入れたのです。そう思って観ていると事務所の警備員が言っていた「半年以来だな」というセリフは、妻の妊娠期間ともぴったり合います。

-見逃すな、キーアイテムはサングラスと時計!-


 

映像に映る二人は全く同じです。もし二人が別人ならば見分けるポイントがあるはずですよね…?例えば双子でもほくろの位置が違ったりとか、まあ細かいことですが。そんな二人を見分ける目印になるのが、腕時計です。よっぽどおしゃれな男性でなければ、毎日時計を変えたりしません。まして、大人になればそこそこのお値段のものをつけているはずなので、お金持ちじゃない限りそんなに何本も持っていないものです。歴史教師に三流俳優じゃあ、お金持ちな訳もなく…そういうわけでこの映画に出てくる腕時計は二つだけ。アダムは革ベルトのシックなもので、アンソニーはシルバーのものです。
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まあ、そんなことを意識せずとも二人の区別はしっかりつくような作りになっているんですがね。。。

ある一場面を除いては…

物語中盤、隣に寝ているヘレンとシルバーの腕時計からアンソニーと思われる人物がソファに座りなんだか考え込んでいる様子、↓画像この場面。(時計のベルトが光の加減で黒く見えますが、よく見るとチェーンのようになっています)その横のサイドテーブルに置かれていたのがサングラス。しかしこのサングラスがこの部屋にあるのはどうもおかしい…なぜならこれは明らかにアダムが変装用に購入したものだ。エッジ部分に派手な装飾が施されていて、一目瞭然。当然アンソニーが持っているのは不自然であるわけだ。もし二人がたまたま同じサングラスを持っていたというならしょうがないが、アダムがサングラスを選ぶシーン、かけて電話をするアップのシーンがあってのライト下にわざとらしく置かれたこのサングラスは確実に意味があるはずです。。。
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お分りいただけただろうか…?
もう一度ズームの画像で。

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アダムが買ったはずのサングラスを、アンソニーが持っている。つまり二人は同一人物であるという、ひとつの証拠になっているのではないでしょうか…?あまりサングラスについての言及を目にしないので、間違っているのかもしれませんが、あしからず! こういう細かいキーポイントがちりばめられていて、「あれはああだ、これはこうだ」と言いながら観れるのが本作の良いところ。映画好き同士で語り合いながら観たいそんな作品の代表ではないでしょうか!

-時系列はバラバラ-


この映画は時系列がバラバラであると考えられます。というのも、「ブルーベリー」というキーワードの出てくるタイミングだったり、映画ラストの鍵だったりが、どうもすっきりしない位置に挿入されているからです。

ざっと並べ替えてみす。。。

-解釈-
本物の人格はアダム

かつてはしがない俳優として夢を追っていたアダム。芸名はアンソニー

妻に子供ができ、歴史教師として堅実に生きて行く事を決意。

メアリーに出会う。(ガラス張りのビルで働いていたため目につきやすかったはず)

浮気、人格が増える。+アンソニー

おじさんに「映画」をオススメされて家で見る。そこに映る自分の姿に驚愕。

同じ人間がいると騒ぎ出し、身元調査を始める。

びっくりするぐらい近場にいるらしいドッペルゲンガー。事務所もあっさり見つけられる。

(アダム)追跡して封筒を入手

妻の妊娠以来訪れていなかったために「半年ぶり!」と声をかけられる。

アダム)母への相談、体にいいからブルーベリーを食べろという。
↓二日後
アンソニー)「ブルーベリーを買っておけと一昨日言っただろ」

雑誌で見たというが、おととい母に言われていたのを潜在的に覚えていただけ。

いろいろあって…

冒頭の母からの電話と、それを伝える妻ヘレン

事務所で受け取った封筒の中から鍵を見つける

冒頭の怪しい部屋へ

とまあ、ざっとこんな感じですか…映画ラストが冒頭なのか、それとも本当にラストなのか…?

私は新たな物語の始まり、つまりあのラストは本当に全てが起こった後の話だとおもいました。

『世界的に重要なことは2度起きる。一度目は悲劇だが、二度目は喜劇』劇中、歴史教師のアダムは有名な人(誰だか忘れました)の言葉を引用します。

これは物語ラストが冒頭に繋がるような構成とリンクするセンテンスではないでしょうか?
つまり、もし映画ラストがあらたなストーリーの始まりになるとすれば、妻の元についに戻ったように見えたアダムがまた同じことを繰り返すことになるのです。はじめは異常なドッペルゲンガー現象に戸惑った観客も、真相を知ってしまった今となっては何の疑問もない、ただ愚かな男の話でしかなくなるのです。1度目は恐ろしいスリラー、サスペンスだったものがただのコメディになるというわけです。これが世界的に重要なことかは不明ですが、不倫というものは世界的にみても多く起きていることの一つだという事だけは事実ですね…

情報の制限や、言論の自由を奪うなど多くの独裁の方法は繰り返されてきたと語る教師アダム。その話の直後に映される、浮気相手との何シーンにもわたる性行為。これはつまり独裁を意味しているのでしょうか?そしていったい誰に対しての独裁だったのでしょうか。浮気を繰り返す事で妻への嘘は増えてゆきます。それはつまり情報の制限なのでしょうか?まだまだ掘り下げられそうな「複製された男」これからも定期的に見ていきたいとおもいます。

こんだけ考えさせられる作品はよくも悪くもなかったかなあとおもいます。後味の悪ささえ納得はいきませんが、その過程、緻密な情報の散りばめ方やストーリーテリングは最高でした。ただいま絶賛公開中の「ボーダーライン」や、あの「ブレードランナー」の続編の製作も任されている監督ドゥニ・ヴィルヌーブの作品なのでオススメしたいですね…ただ、万人ウケするものでもないのでなんとも!根気のある方はぜひ、一人でも、友人とでも「このシーンの意味はさ…」なんて、語るのが楽しいと思いますよ。「映画通ほど、ハマる!」というパッケージに記されたコメントはまさにその通り? 私が映画通かはわからないですが、少なくとも大ハマりしました。小難しい作品にチャレンジしてみたい方はぜひご覧になってみてください。

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