『アイアムアヒーロー(映画)』日本でのゾンビパンデミックは絶望的

アイアムアヒーロー

感想・レビュー(ネタバレなし)

[評価]

■脚本:9
■演出:10
■キャスンティング:8
■この映画えらい度:10
■好き度:9
■期待値とのギャップ:8
■総合:9

91

/100

 

スタッフ
監督:佐藤信介
原作:花沢健吾
脚本:野木亜紀子
製作:市川南
共同製作:寺島ヨシキ

キャスト
大泉洋:鈴木英雄
有村架純:早狩比呂美
長澤まさみ:藪
吉沢悠:伊浦
岡田義徳:サンゴ

[あらすじ]
花沢健吾のベストセラーコミックを、大泉洋主演で実写映画化したパニックホラー。冴えない漫画家アシスタントの主人公・鈴木英雄が、謎のウィルスによって「ZQN(ゾキュン)」と呼ばれるゾンビと化した人々に襲われ、逃亡の道中で出会った女子高生の比呂美と、元看護師の藪とともに不器用に戦いながらも、必死でサバイバルしていく姿を描く。主人公・英雄を演じる大泉と、歯のない赤ん坊ZQNにかまれ、人間に危害を加えない半ZQN状態になるヒロイン・比呂美役の有村架純、大胆な行動力でZQNに立ち向かう藪役の長澤まさみが共演。「GANTZ」「図書館戦争」シリーズを手がける佐藤信介監督がメガホンをとった。(以上、映画.comより)

こちらが予告編↓

-コメント-


日本でのゾンビ映画といって思い浮かぶのは品川祐監督の「Zアイランド」ぐらいなもので、実際このジャンルの映画が撮られだしたのは2000年に入ってからのようだ。しかもそれらはA・ロメロなどの海外ゾンビ映画を基にした「オマージュ作品」のような印象がどうしても拭えなかった。それゆえシリアスなストーリーと言うよりはコメディー色の強いものが多い。そもそも、火葬文化の日本でゾンビと言うのは多少無理やりだとも言える。しかしその土葬だ、火葬だという論点も関係なくなってきたのもまた事実である。「28日後…」などのように「謎のウイルスによる感染」という突発性のパンデミックであれば、人を燃やしてツボに入れる手間を経ない分、大パニックになっても違和感はないというわけだ。そんな訳で制作された「アイアムアヒーロー」はコミック原作の実写版である。コミック自体未完の作品らしいが、結末はどうなるのか?いや、どうするのかというべきか。というのも、今回の実写版があまりに完璧すぎて、下手をすれば「原作の方がイマイチだった」なんてことにもなりかねない…(その辺は大人の事情で打ち合わせ済みかとも思うが)それぐらい、邦画とは思えないレベルのゾンビ映画に仕上がっていて、R15指定でよう通ったなあ、と思うほどしっかりグロい。ただのオマージュに成り下がらない「日本で起きたゾンビパンデミック」を忠実かつドラマチックに描いた本作は、「日本初の本格ゾンビ映画」といって間違いないだろう。だからこそ、これを観て思い知った。

日本でゾンビパニックが起これば生き残る可能性は非常に低いと…

 

 

-ゾンビ映画大国アメリカに引けを取らない傑作!-


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ネタバレはないですが、ここからは小ネタににも触れていくのでクリーンな状態で見たい方は鑑賞後にどうぞ!

「制作費ナン億円!」なんていう宣伝を最近よく見るようになった日本映画界。たしかに、お金をかければそれだけ立派なCGが使えるし、ハリウッドに近づくことはたしかだ。がしかし、近づいたところで所詮二流品。やはり邦画は邦画のフィールドで戦うほかないのだと思い知らされる。そんな中、ゾンビという映画ジャンルは今や一大市場にして、ストーリーメインにも持っていけて、やり方によっては制作費も大幅にカットできるなんとも日本向きなジャンルである。特殊メイクこそ必須であるが、大きな爆発や、SF的巨大戦艦などを描く必要がない分、「ロケ」での撮影がメインで撮れるというのが大きな利点である。

そんなゾンビ映画の良さを生かしつつ、ダイナミックな動きや、高揚感、恐怖感を煽る音楽、ゾンビの生々しさなど紙媒体では描ききれない、映像でしかできない表現をふんだんに描いているのが「アイアムアヒーロー」 無駄なCGにこだわらずに済むという点では違和感のない完璧な作品だった。

さらに「日本らいしいゾンビ映画」

というのは、ありふれたこのジャンルには斬新奇抜なプロットである。なんといってもゾンビのゾンビらしからぬ動き…あれは確実に貞子系の霊的動作。気持ちの悪いぐにゃぐにゃした動きは今までのゾンビとは一線を画している。また、この映画ではゾンビが恐ろしいことはもちろんだが、舞台が「日本」であることでより一層恐ろしくなる。道は狭く、部屋に入る時は靴を脱ぎ、銃は滅多に見つからない上に日本独特な武器「刀」が転がっているわけでもない。住宅が密集していることで、ゾンビとの遭遇率は一層高くなり、その度にただ、逃げるしかできない日本人を目の当たりにするのだ。今まで見てきたゾンビ映画と違って、

人間が圧倒的に弱すぎる。

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アメリカのゾンビ映画なら、車のダッシュボードだったり、家のタンスや街のガンショップなど探せばどっかにはあるだろう銃。最悪警官が銃を携帯しているし、その扱いも心得ている。しかし、日本ではどこを探してもそんなものは落ちていない。警官が持っているかもイマイチわからないし、彼らがゾンビの頭を射抜けるとは到底思えない。ましてピストルなんて弾数が極端に少なくてゾンビパニックに対応できるはずなんて絶対にないのだ。

そんな日本人が何でゾンビに立ち向かうとお思いだろうか。それは…

エアーガン

まさに「映画の見過ぎ」とはこのことだ。「VSゾンビは銃でしょ」、「ゾンビに対してバンバン撃ちたい」といった安易な考えが、人でさえ皮膚表面が赤くなる程度のエアーガンを歩くしかばねと化したゾンビに向かってバシバシ当てていく。効くわけなかろうに…ただ、それがリアルで面白いのだ。実際、今この瞬間にゾンビウイルスが蔓延するならば私は、一つだけエアガンを持っていくと思う。効かないのはわかっている。わかっているのだが…ジーパンのケツの方にエアガンを挟んで、華麗に抜き相手に向ける。この動作を一度でいいからやってみたいという少年のような願望があるからだ。。。「男なんてそんなもん」と思っていただきたい。バカなんです、そんなパニックになっても尚バカなんです。許してやってください。

そんなわけで、銃を持つのは趣味で猟銃を所持していた英雄(大泉洋)だけ。かつてゾンビ映画で銃が一丁なんてカオスはあっただろうか。。。ただ、そのカオスがパニックの始まりを一層色濃くする。日本では普段決して土足で入らない部屋に、一歩ブーツの硬い音が響けばそこはすでに異次元。全てが変わってしまったことの暗示なのだ。脅威への圧倒的弱者。これが日本だ、と現実を突きつけられ、一層ゾンビパンデミックが楽しみに恐ろしくなったのだった。

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さらに面白かったのが、

ゾンビパニックのその瞬間をワンショットで写したということだ。

いままでも当然、ゾンビパニック発生直後というのは描かれてきた。しかしこの「アイアムアヒーロー」ではそれがワンショットで映される。ワンショットというのは、カットなしで(またはカットしていないかのように編集)一連の出来事を流しで写していくことで、その瞬間がよりリアルで「今まさに起こっていることだ」というのがすごく伝わるようになる。今回はこの手法が使われたことで、英雄(大泉洋)が現状にパニックになり、全てを悟るまでを綺麗に描いている。また、外にいる人は、現状に気づいていたり、いなかったりで主観の英雄(大泉洋)自身、誰がゾンビかわからないという状況だった。これは意外と新鮮なシーンだったと思う。というのも、今まで、主人公が外に出た時にはすでに全てが始まっていて、常人がゾンビから逃げ惑う図が出来上がっていたことが多かったからだ。そういう意味で、主人公が初期段階から異変に気付き、買い物帰りの主婦や学校帰りの学生がのんびり歩く中を爆走しているのは面白い視点だったと思う。

-これは本当に邦画なのか…?-


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本作「アイアムアヒーロー」は映論のさだめたレイティングシステムによりR15指定となっている。しかし、これがR15で通ったのは実際意外なきがする。まあ、確かあからさまなセックス描写はないし、殺すのもゾンビだけ。R18にするほどでもないのだが。。。しっかり首は飛ぶし、あの可愛いプニプニほっぺの有村架純ちゃんがゾンビの首を素手でもぎ取っちゃったりもするからびっくり。予想の遥か上をいくしっかりとしたスプラッター描写は涙を浮かべて喜んだ。

「日本のシネコン映画もここまで来たか!」と。。。

海外作品でも、日本作品でも、大概こういう作品は小さめの映画館とか、よくてピカデリーとかでしかやらないジャンル。それを大泉洋、有村架純、長澤まさみとトップ級の俳優陣を使うことでパット見、外見のビジュアルはカジュアルな作品になっているのだ。しかし、見てみてびっくり、内容は「初級編ハードモード」のゾンビ映画というドッキリ仕様だったのだ。R指定にしてまでゾンビ映画を作ろうと思った監督に賞賛を送りたい。

また、「ゾンビが人を襲うことへのエビデンス」が軽くだが触れられていたのもいい。ただ「食べたい」だけでなく、『過去にとらわれている』ことを強調し、攻撃性の原因を一種のストレスに持って行った。だからこそ、感染時に負っていたストレスから生まれる文句を常に口走っていたのが印象的だ。。つまり、人々の「心の闇」とでも言おうか、ストレスだった部分がゾンビになることで増幅する。よって攻撃的になるというわけだ。おもしろい。

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さらに今作ですっばらしい演義をしていたのがいうまでもなく大泉洋だ。ビジュアルが公開された時から「原作に忠実」と話題になっていたが、原作ほどブサイクでもないが、かっこいいわけでもない。その絶妙なラインにより『俺が君を守る!』というセリフが寒くなりすぎないのも良かった。もっと言えば、主人公英雄は大いに大泉洋でもあった。例えば喋り方や台詞回しは『水曜どうでしょう』の時に出る素の大泉洋だった。エアガンで戦い、効かないとわかった時の「全然効かないじゃない!」なんていうセリフはまさに洋ちゃん!どこか笑えるセンスのあるセンテンスは見ていて楽しかった。

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まあ、結局は「有村架純と逃げられるならゾンビ大歓迎」っていう結論に至るのだが、とにかく最高だった。(猫パンチは必見)ゾンビ好きなら絶対にみてもらいたい作品で、これからの邦画に大変期待が持てるそんな作品となった。また、下手にマシンガンが出てこなかったり、しっかりショッピングモールに逃げ込んだり、観客の「見たい」もしっかり詰め込んだ作品だったので、鑑賞後の満足度もすごく高かった。4/23から絶賛公開中です、是非に!






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