『キョンシー』膝から崩れ落ちるとはこういうことか、衝撃のラストに感情は「無」へ

キョンシー

感想・レビュー(ネタバレあり)

原題:Rigor Mortis
2013/香港 上映時間101分

スタッフ
監督:ジュノ・マック
製作:清水崇
脚本:ジュノ・マックフィリップ・ユンジル・リョン

キャスト
チン・シウホウ
クララ・ワイ
パウ・ヘイチン
アンソニー・チャン
ロー・ホイパン

[評価]


■脚本:3
■演出:10
■キャスンティング:7
■この映画えらい度:6
■好き度:8
■期待値とのギャップ:7
■総合:7

69

こちらが予告編↓

-コメント-


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何よりもキョンシーの印象が変わった本作。「キョンシー」と聞いて馴染みの深い「霊幻道士」から積極的に役者を使ってるのである意味続編。が、一切のコメディ要素を取り除き本格的なホラー、サスペンス、アクション映画に仕上がっている。アクションシーンは納得の出来。それ自体は完ぺき。が、ラストに衝撃が待ち構えている。演出で100点をあげても、脚本で-20000点級のエンディング。全てが無に還る。でも、許しちゃう。そんな映画だった。

衝撃の夢オチ


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「夢オチ」と聞いて思うのは何だろう。人によっては私と違うかもしれないが、一般的に言えばダメな脚本の代名詞ではないだろうか。

A:「この映画どんな風に終わるんだろう?」
B:「夢オチとか?www」
A:「まさかなwwwそれは酷すぎるwww」

なんて具合に、夢オチは決して物語の最後として相応しくない。というのも、今まで見てきた全てが「夢だった」と言われてしまえば「あの描写の解釈は?」とか「あの人の力の起源は何?」とか、いちいち考える、考えられる鑑賞後の楽しみをすべて奪ってしまうからだ。なんたってすべて夢なのだから。それはある意味罪である。重罪である。せっかく2時間、ないしは1時間のすべての意識をその映画に注いだのに「君が一生懸命見てきた今までのものに、意味なんて何もないよ?ははは」と嘲笑われているような気になるからである。それは少なからず幾らかの代金を払っている客に対してあまりにもひどい現実ではないだろうか。それどころか、当然、脚本家は楽なわけだ。例えば構想段階で「こんなのいくら何でもあり得なくない?」とか「この二つの要素の関連性は?」なんていう議論も「ぜーんぶ夢だから!」と一言、それで全て解決してしまう。まあ、この作品の場合、題材が「キョンシー」なのでその辺のエビデンスに関する議論はもともとあってなかったようなものだとして、さらに衝撃のラストが待っていることも元々期待はしていなかった。というか、そんなものなくて良かったのだ。ただ霊幻導師と邪道師のアクションが見れて、特に何もなく終わってくれればそれで良かったのだ。なので、すべてが明らかになるラスト5分前に停止ボタンを押して、「面白かった!」で終わるのがベストかもしれない。なぜ、どうしてあのラストを追加し、突然客席を現実の世界に引き戻したのかは理解に苦しむ….。そして、近年これほど清々しいほどの夢オチを脚本にした者も珍しい。こういった意味では「衝撃のラスト」に他ならない。

それでも69点の評価をつけるのは、ラストまでは完璧だったからだ。キョンシーのイメージを払拭し、おどろおどろしいモンスターとしてしっかり描き切った。それに引けを取らない双子の幽霊、彼女たちの周りでうごめく紅い閃光のような気は今まで見てきたどんなオーラよりも気味が悪かった。そしてなにより、導師たちの戦闘シーンは観客の「見たい!」が詰まった素晴らしい出来だった。格闘に加え、手にひらに印を結び悪霊を退散する、その一連の動作のかっこいいこと…一気に引き込まれたのだった。そうして迎えるキョンシー+双子の幽霊という最強ラスボスとの最終バトル。かつて映画で導師を演じ有名になったという主人公と今作での導師のタッグバトルは気持ちが高ぶる。こうして予想外の傑作に胸を躍らせたのだ。

だがしかし、そう落ちは夢。というか走馬灯というのだろうか。主人公の男は首吊りに成功し死亡、導師として住民を助けていた眼鏡の爺さんはただの使えないコック。夫を亡くしたおばあさんは、しっかりその現実を受け入れ遺影を眺めているし、悲惨な人生を歩んでいた妻子は実に幸せそうな笑顔を浮かべて男に微笑んでくれている。しまいには、死体の確認に息子が来るという始末。せめて自殺したのだから、子供ぐらいは悲惨な目にあっているだろうという最後の望み(?望んでいいのだろうか)さえも打ち砕かれた。実際、首をつった男以外は平穏で幸せな生活を送っていたのだ。そして、今まで見てきて、気持ちが高ぶったりした瞬間のすべても夢だったのだ。そのラストを突きつけられた瞬間、私の感情は一度無に帰るしかなかった。

最大級の解釈は人間の性へ


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夢オチということにせめて何かしらの意味を込めたいと思うのが人間のサガなのだろうか。今までしてきたことをダメに、無駄にしたくないという思いがどうしても働いてしまう。そんな人間の貪欲な精神がこの映画のテーマなのだろうか、とか考えたりしてみた。というのも、自殺した彼はかつて俳優としての成功を収めた。しかし今は落ち目で、引っ越しだというのにスーツケースの中は昔の衣装でびっちり。過去にしがみついているのだ。そんな彼が生前最後に見た「夢」が『妻子は死に、自身もキョンシーと言うかつての栄光の産物によって殺される、いわば名誉の死」だった。きっと、俳優業にかかりっきりで妻は離れ、子供も連れて行かれたのだろう。そんな二人を事故か何かで死んだということにした世界で、ある意味彼は救われるのかもしれない。皮肉にも、生きている彼女らよりも死んでいる方が楽だということだ。その死に自分の責任はないからである。実際、そんなことはないだろうとは思う。離婚して去ってしまった妻子に対して「死んでしまったならば気が楽なのに」なんていう考え方はあまりに偏っている。まあ、しかしこれは映画。(しかも夢オチで終わるようなね)自殺にまで追い込まれた主人公の見る夢ならなくもないかな、という見解だ。そして、死ぬ間際でさえも、自分の過去の栄光にすがろうとする、そんな人間の欲にまみれたサガを描きたかった、というならば「夢オチ」にも10%ぐらいは頷いてあげてもいいかなあ、と思った。何にしても、夢オチには納得できないが、それまでの演出は完璧だった。「すごく面白いよ!」と手放しでオススメはできないものの、是非見てもらいたい作品ではある。いろんな意味で。。。興味がある方は是非!ちなみにhuluでも配信中!






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