『デッドプール』殺人動機は「俺ちゃんの顔なおしてよっ!」ナイーブな彼の究極ラブストーリー

デッドプール

感想・レビュー

[評価]


■脚本:8
■演出:10
■キャスンティング:9
■この映画えらい度:10
■好き度:8
■期待値とのギャップ:5
■総合:8

83

/100

原題:Deadpool
2016/アメリカ 上映時間108分

スタッフ
監督:ティム・ミラー
製作:サイモン・キンバーグライアン・レイノルズローレン・シュラー・ドナー
製作総指揮:スタン・リー

キャスト
ライアン・レイノルズ:ウェイド・ウィルソン/デッドプール
モリーナ・バッカリン:ヴァネッサ
エド・スクレイン:フランシス/エイジャックス
T・J・ミラー:ウィーゼル
ジーナ・カラーノ:エンジェル・ダスト
ブリアナ・ヒルデブランド:ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド
ステファン・カピチッチ:コロッサス(声)

[あらすじ]
マーベルコミック原作の人気作「X-MEN」シリーズのスピンオフで、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」に登場した異色のヒーロー、デッドプールを主役に描くアクションエンタテインメント。好き勝手に悪い奴らをこらしめ、金を稼ぐヒーロー気取りな生活を送っていた元傭兵のウェイド・ウイルソンは、恋人ヴァネッサとも結婚を決意し、幸せの絶頂にいた矢先、ガンで余命宣告を受ける。謎の組織からガンを治せると誘われたウェイドは、そこで壮絶な人体実験を受け、驚異的な驚異的な治癒能力と不死の肉体を得るが、醜い身体に変えられてしまう。ウェイドは、赤いコスチュームを身にまとった「デッドプール」となり、人体実験を施したエイジャックスの行方を追う。「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」でも同役を演じたライアン・レイノルズが、毒舌家で自己中心的という型破りなアンチヒーローのデッドプールに扮した。全米ではR指定作品として記録的な大ヒットを飛ばした。監督は、視覚効果分野出身で今作が初長編作となるティム・ミラー。(以上、映画.comより)
 
こちらが予告編↓

-コメント-


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この映画にはオープニングのクレジットがある。しかしそこではだれも実名がわからない。一般的にはおしゃれな映像とともに監督や主要キャストがクレジットされるのだが、”世界一のマヌケ”とか”世界一ホットな男”とか(ニュアンスのみ。正確性はないです。)そんなざっくりした説明だけ。この段階で多くを笑っていることに一瞬で引き込まれた。そんな「ジョーク」がテーマともいえる本作は本当に珍しく誰にでもお勧めできるアメコミ映画となった。
デッドプールの知名度が上がったのは最近だろうか。私自身、彼のビジュアルは認知していてもスパイダーマンの仲間かと思っていた時期もあった(関わりがないといえば嘘になるが)。何者かを知ったのは去年のことだったし、そもそもアメコミ自体映画が基本な私は詳しい方でもない。映画を見て関連性の高いコミックを読む。常にそんな感じだ。なので今作も映画が公開されると知ってから情報を集めだしたにすぎない「デップー素人」である。そんな私だが、この108分という近年の映画にしては非常に短い時間の中でデッドプールが大好きになった。「デップー大好き!」とかいうとニワカがと冷めた目で見られるかもしれないが、これはみんなが愛せるキャラクターで、だからこそこれほどの人気を博しているのだと今になって実感する。例えばスパイダーマンが人気なのは彼も人間で悩む姿に共感出来るということがあると思う。デップーもまさにそうなのだ。いやむしろ彼の悩みはとってもちっちゃい。醜くくなっ顔を直して欲しい。だから邪魔者は殺しちゃうぞ。とまあそんなとこだ。ヒーローになり、叔父を殺され恋人も死んでしまったりするピーター・パーカーよりよっぽど我々に近いのだ。

巨大な宣伝カーが街を走り回ったり、極めて数は少ないもののなかなかのクオリティーの手乗りデップーを先着順で配布したりと宣伝へのお金の使い方も納得のいくものだった。配給会社でどんな会議があったにせよ今までのアメコミ映画よりは評判が良かったのではないだろうか。「よし!広告費奮発しちゃうぞ!」なんて上司が言ったのかもしれない。実際のところはわからないが公開前からの煽りが近年で見れば極めて目に付きやすいものだった気がする。そのおかげか、はたまたデップーの持ったポテンシャルのせいか「あの赤い無責任ヒーロー?観たい!」という声を多く聞いた。個人的には煽りのせいでテンションを上げすぎた感じは拭えないが、字幕、吹き替えと2度鑑賞してみてそれも彼の人間性に寄与するものだと納得。バカをふり切り過ぎなかったのが彼の人間臭さを際立たせ、観客の共感さえも得たのだ。

-あまりに淫ら、それでいて愉快、アメコミ映画に新たな風が-


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台詞回しがとにかく淫ら。いやらしいったらありゃしない。この映画がR指定なのは広く知られたことだろう。しかし、コミック原作の実写化でR指定にするというのは大変な挑戦ではなかろうか。なんせ、ヒーロー映画は子供が見てこそ興収が稼げるみたいなところが少なからずあるからである。実際15歳以下が大きく影響を及ぼしているとは考えづらいものの、製作陣としてはやはり若い層に向けて作りたいとも思うはずである。まして、失敗続きのライアン・レイノルズのヒーローが抱える赤字額は相当なものだろう。。。彼が悪いわけではないのだが、心配して当然のふしはある。

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実際、デッドプールは一度銀幕に登場している。それはウルヴァリンの誕生を描いた「X-MEN ZERO」だ。特殊部隊で活躍するウェイド・ウィルソンはもちろん同名、また刀を背中にクロスにさしている姿はまさにデップー。マスクさえかぶっていないものの、今後に期待さえさせられた。しかし、その期待はなんと上映時間のうちに大いに裏切られることとなったのだった。デップーの持ち味の一つである達者なおしゃべりを文字通り封じられ、必要以上の能力が与えられている。赤いスーツどころか悩ましかったただれた肌の変わりに謎の落書きが身体中を覆っている、もはやウェイドという名前だけが彼をデッドプールにしている状態は、ファンを大変失望させたのだった。

こうした失敗は作品をまたいでネタとして「デッドプール」で扱われている。かつて私は「キャプテン・アメリカ/ファーストアベンジャー」や「マイティー・ソー」を「アベンジャーズ」に向けた2時間の予告編と言っていた時期があった。ユニバースが構築され確実なものになってきた今となってはもはや傑作にすら感じられるが、単体で見た時にはあまりにも盛り上がりに欠ける作品だったからだ。しかし、シビルウォーなどが公開されるにつれ評価は上がっていった。それがMCUのやってのけたユニバース構想の素晴らしいところだ。過去作との関連性で言えば「デッドプール」もにたところがある。間違っても傑作にはなりえないが、ネタとして扱われたことで多少なりとも存在価値が見出された。つまりただの駄作から何十億円もかけた前説映画へと進化したわけだ。えらい。

ネタにする」これはキャプテン・アメリカではできなかったことだ。というのも、デッドプールに限っては第四の壁を超え観客に話しかけられるというギフトが与えられている。だからこそ、我々の世界で見てきた大きな過ちをネタにすることも、実際の俳優名を出して笑いを取ることも可能だった。こういうアメコミヒーロー映画は当然今までなかった。笑える作品としては「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」や「アントマン」などがあるが彼らのユーモアには限りがある。彼らの世界で、彼らの時事ネタで戦うしかないのだ。それに比べデップーはといえば劇中に出てくるヒーローや事件はもちろん、それを演じる俳優自身や制作の裏エピソード、公開にあたって突っ込まれそうなことさえも映画の中でいじったり、セルフオマージュも可能なのだ。無限のユーモア、これほど愉快なヒーローは今までいなかった。

こういうヒーローは、今の殺伐としたヒーロー世界に爽やかな風を吹き込んだ。オナニーだセックスだ騒いでる映画で爽やかというのも変な話だが、現実思考の強いクライムサスペンスに近づいてきたMCUはすでに途中参戦者を追いやる形にさえなってきた。X-MENも同様だ。「今更何が何だかわからない」そう思っている人は山ほどいるはずで、そんな状況さえもデップーは言及している。そんな初見で楽しめるアメコミ映画が減ってきた今、大変重宝される映画となったことだろう。さらに言えば、この映画をきっかけにそれらの複雑なユニバース構造に誘導することも可能だ。この映画の中だけでもたくさんのアメコミ映画ネタが盛り込まれている。最終決戦の地はアベンジャーズでおなじみのヘリキャリアだというのだから驚きだ。そんな細かな情報に興味を持った人にはそれぞれの作品をお勧めできるのだ。そういう意味では非常に使い勝手のいい映画でもある。
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デッドプールは全編通してリズム感がとてもいい。最高のアクションに音楽、何度でも観れる作品なので体内でデッドプールが切れたら、劇場にキメに行っていただきたい。全身でデップーを味わい、震え、スクリーンを後にする。その準備としてApple Musicでプレイリスト↓を作成した。映画を120%楽しむために聞いてみるのもいいかも。ではでは。

デッドプール/サントラ・プレイリスト

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