『君の名は。』作風は大きく変わるも、媚びていない新海誠の新境地。

君の名は。

感想・レビュー

[評価]


■脚本:9
■演出:10
■キャスンティング:10
■この映画えらい度:9
■好き度:10
■期待値とのギャップ:8
■総合:9

93

/100

作品情報

2016/日本 上映時間107分

スタッフ
監督:新海誠
原作:新海誠
脚本:新海誠
製作:市川南川口典孝
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:安藤雅司

キャスト(声の出演)
神木隆之介:立花瀧
上白石萌音:宮水三葉
長澤まさみ:奥寺ミキ
市原悦子:宮水一葉

[あらすじ]
「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」など、男女の心の機微を美しい風景描写とともに繊細に描き出すアニメーション作品を手がけ、国内外から注目を集める新海誠監督が、前作「言の葉の庭」から3年ぶりに送り出すオリジナル長編アニメ。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」で知られ、新海監督とはCM作品でタッグを組んだこともある田中将賀がキャラクターデザインを担当し、「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などスタジオジブリ作品に数多く携わってきた安藤雅司が作画監督を務める。1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山深い田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉は、自分が東京の男子高校生になった夢を見る。日頃から田舎の小さな町に窮屈し、都会に憧れを抱いていた三葉は、夢の中で都会を満喫する。一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高生になっている夢を見ていた。声の出演は神木隆之介と上白石萌音。(以上、映画.comより)

こちらが予告編↓

予告2(RADの「スパークル」が使用されてるVer.)

コメント


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新海誠のどの作品よりもポップでスピーディ。彼らしさは感じるが、全く新しい作品。
笑えるシーン、しっかりエッチな男の子の描写など今までの作風とは全く違うと言って良いと思う。
謎解き要素や、コメディ要素、新しい顔を見せながらも、「忘却」をあえてSFチックに描くことで逆に誰にでも通づる共感性を内包している。それは今までの彼のどの作品にも共通する部分で、美しい背景描写が本当の意味で生きてくる新海誠らしさ。決して作風を変えてきたのではなく、これまでの土台の上に新たな作品を作った新境地に達した作品が「君の名は。」である。この映画を観て主人公たちに「自分」を感じた瞬間、大傑作になること間違いなし。また運命の相手を待ってる、そんな人には待つことを加速させる、絶望への入口的な映画でもあったり…??

とにかく、日々”何か”を忘れながら生きている私たちに、「その何かを忘れるな」、「忘れた事を思い出せ」と問いかけるようなプロットは改めて日常を思い直させる映画だった。

忘却というテーマ


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この映画には様々なテーマが内包されていると思う。インタビューで語っていたが、監督自身「これ」というテーマは決めていなかったらしい。製作途中に「もしかしたらこれがテーマかな?」なんて感じで探りながらだったようだ。(ちなみに監督はRADの曲中の歌詞『美しくもがくよ』にテーマを見出したらしい。)だからこそだろうか、作中たくさんのことを考え、たくさんのテーマを見出したような気がする。その中でもやはり「忘却」について思い巡らすことが何よりも多かった。
夢の中で瀧と三葉がお互い入れ替わり、それぞれの生活を生きてみる。しかし、次に目が覚めるとその記憶はだんだんと消えていく。思い出せないと思ったその瞬間は「忘れたくない」と思う。思い出せとも思う。しかし、完全に忘れてしまえばそんな感情さえなくなってしまう。何を忘れたかさえわからなくなる。「あの人の名前が思い出せない…!」夢の中で体がが入れ替わる、そんな突飛で、現実にはないプロットだけれども、日々何かを忘れながら生きている僕たちに、その何かを探させようとするのだった。

つまるところ忘れるということは、我々が生きることそのものではないだろうか。私たちは色んなことを忘れながら生きている。記録がなければ大きな災害でさえひとは忘れて行く。その災害がもたらした被害も、美しささえも。劇中、一葉が話していた麻由二郎の大火。これによって多くの記録、記憶が消えてしまった。だから、三葉たちはその意味を知らないまま伝統だけを守り続けている。ただ、その意味を探しながらでも、「忘れてはいけない」と、かつての生活を後世に受け継いでいた。

エンディングで流れるRADWIMPSの「なんでもないや」という曲の、その歌詞のひとつに『星にまで願って手に入れたおもちゃも、部屋の隅っこに今転がってる』というものがある。まさにこの通り。あの時あれだけ必死になっていたものも、今じゃその理由はわからない。でも、その好きだった気持ちを思い出して!忘れないで!そういう想いが伝わってきた。もちろん、新海さんがその想いを込めていたかは分からないけど、忘れないで生きていこう、我々が経験した苦難を喜びを、出会いを。そう想い映画館を後にしたのだった。そうしてただひたすらに感想を書き溜めた。忘れないように。今自分から生まれたこの言葉たちを。

今までとの比較


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↑のコメントにも起筆した通り、今までとは大きく変わった作風。しかし、配給の東宝に媚びを売るような全くの別物を仕上げたわけではなかった。過去作ではどれも「主人公たちの小さな世界は、当人たちにとっては世界の全て」そんなナイーブ描写が特徴だった。そしてそのプロットは多くの人の共感を得た。最新作「君の名は。」では今までのような内気なキャラクターはすごく少ない、というかいなかっただろう。しかし、もっとライトな部分での共感性が本作は優れていた。男子高校生が女子の体に入ったらもちろんおっぱいを触るだろう。そこはどうしたって見逃せない。今までならそんな描写は描かなかっただろう新海監督は、コメディー要素を新しく盛り込んだのだった。また、何かがおかしい、と観客に思わせ頭を使わせるミステリー要素、夏映画になくてはならないアドベンチャー感、それらも絶妙な配分で散りばめられ、今年1の、いや近年1のエンターテインメント作品に仕上げてきた。
「君の名は。」 が新海誠にとって、本当に撮りたかった作品なのか、思い通りに出来たのかは実際わからない。ただ、彼のどの作品よりも映画らしく、短編で観てきた彼の作品が一挙に集まり、最高の夏映画に仕上がっていたのは間違いない。
言い換えれば、「新海誠ぽい!」とはあまり、思えなかった作品でもある。「夏映画」として、ある程度クセが抜けた作品になってる感じがした。だからこそ「君の名は。」 は、もともとの新海ファンはもちろんの事、むしろ今まで苦手で敬遠していた人にこそオススメの作品、入門編なのかもしれない。

新海誠作品の割に、世界は広くて壮大で、それでいて共感性は変わらず強くって、どんな些細な描写でも瀧や三葉の中に自分を見た瞬間にこの映画は傑作になる。

あえて挙げる残念ポイント


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もう、この作品は大好きなんだ。ただ、あえてマイナスポイントを挙げるとするならば…
キャラクターにもCGがわかりやすく使われ、動きが滑らかになりすぎたシーンがあったこと。だろうか。宮水神社での神楽の舞や、ラスト三葉の坂ダッシュなど、まるで「Peeping Life」のような変に滑らかな動きがすごく気になった。背景は超美、人物はアニメ。その現実との地続きにありながら、物語はフィクションという表現が好きだったので、あまり人物にリアリティは欲しくなかったかなあと思った。まあ、好きなんですがね、結局。

その他


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音楽

なんといっても、この映画のヒットに一役どころか二役も三役も買ったであろうRADWIMPSの楽曲たちは本当に素晴らしかった。「君の名は。」を見に行こうと思ったのも、予告でおなじみの「前前前世」のスピード感にとても惹きつけられたからだった。多くの人がそうだったろう。その他にも主に3曲がある。OPの「夢灯篭」、彗星が迫ってくるその瞬間んいながれる「スパークル」、そしてエンディングの「なんでもないや」である。そして、楽曲がただの主題歌でなく、登場人物のひとつのように扱われていることから、多くの点でリンクしている。むしろ、監督が楽曲を聴いて参考にしたところもようだった。
例えば、「スパークル」の『今までは序章の序章で〜♪』と、勅使河原の「ここからや!というセリフ。また、「忘れまい」、「生きよう」と『美しくもがく』様子、挙げればきっときりがない。
また、音楽の間奏というのはフラストレーション溜まること多いけれども、250秒ほどとこれだけの長さにもかかわらず「スパークル」の間奏中は死ぬほど楽しく、悲しい。今回はピアノ曲も含め全26曲を手がけているRADWIMPSの新たな一面を見たような気がする。

背景描写について

何故だろうか、美しいとされていた新海誠の背景描写、今回は人もお金も前作に比べて格段にあるだろうにその手の混み方に甘さが出てきたように感じてしまった。むろん「言の葉の庭」で感動した私にとって、水の描写、そこに反射する光の描写は有無を言わさず完ぺきだったわけだが、今回は「これは…」と息を呑むようなシーンはそれほどなかった。むしろすべてアニメ的で、キャラクターたちに同化している気さえした。だがしかし、「言の葉」が40分程度なのに比べ、今作は100分程度ある。それだけの時間、ほぼ全てにある背景にどれだけの時間がかけられるのかはわからないが、「ああ、美しいなあ」とは思えど、息を呑むほどでもなかった。無論ただの慣れだと言えばそれまでだが、未だ「言の葉の庭」を見ると息を飲むのは間違いないのだ。

ユキちゃん先生

劇中、ある人物に目を疑った人も多いだろう。新海ファンなら絶対に知っているそのようし、声。そして半信半疑でエンドクレジットを見ると「ユキちゃん先生」と打たれている。そう、「言の葉の庭」のヒロイン、雪野百香里が本作で物語のキーワードのひとつ「黄昏時」「かたわれ時」について説明する古文の先生として登場するのだ。のちに読んだパンフレットに、この事は書いてあったので正式な設定であるようだ。四国に行ってしまった雪野先生は岐阜県まで来ていた。東京までもう少し。”ひとりで歩ける”ようになるまでもう少しなのかな?と少し微笑ましく思ったりした。

まとめ


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今までにないエンターテインメント性に満ち満ちた作品なので、元々の新海誠ファンはもちろんだが、話題作「秒速〜」や「言の葉の庭」でもあまり乗れなかった人にこそ見て欲しい作品。これこそ、新海誠の集大成にして、入門作品。この世界観、個人の小さな問題や苦悩を、大きな世界の中で描き切る。確実に単調な日々でさえ好きになる。

最後に!
ヒロインを演じた上白石萌音が、本作のエンディング曲「なんでもないや」をカバーすることが決定!三葉の歌う「なんでもないや」が聞けるということで、今から待ち遠しいですね…下にリンクを貼っておきます。↓
『君の名は。』ヒロイン・上白石萌音、デビュー作でRADWIMPSなど映画主題歌をカバー!

公開3日で13億というとんでもない興収を叩き出した「君の名は。」この流れに乗り遅れる前に是非一度劇場へ!

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