紙ひこうき-paperman-

紙ひこうき

感想・レビュー

[評価]


■脚本:10
■演出:10
■キャスンティング:10
■この映画えらい度:10
■好き度:10
■期待値とのギャップ:10
■総合:10

100

/100

作品情報

原題:Paperman
2012/アメリカ 上映時間7分

スタッフ
スタッフ
監督:ジョン・カーズ
製作:クリスティナ・リード
製作総指揮:ジョン・ラセター
美術:ホリー・E・ブラットン
編集:リサ・リンダー

キャスト(声の出演)
ジョン・カーズ
カリ・ワールグレン

[あらすじ]
紙ひこうきが結びつける男女の姿を白黒サイレントで描き、第85回アカデミー賞で短編アニメーション部門を受賞したディズニー・アニメ。ある日、駅のホームで偶然出会った女性にひかれた男が、職場の向かいのビルにその女性の姿を見つける。男は紙ひこうきを飛ばして女性を気づかせようとするが、なかなかうまくいかない。そんな時、男の折った紙ひこうきに不思議なことが起こり……。長編アニメ「シュガー・ラッシュ」と同時上映。(以上、映画.comより)

こちらが予告編↓

-絵の新鮮さ-


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初めてこの短編を見たときのあの不思議な感覚、見た人にはわかってもらえるだろうか。今まで見てきたアニメーションとはどこかが決定的に違っていた。人物と背景の表現方法が違うのだろうか、彼らの髪の毛や顔そのもの「絵」感と、あまりに滑らかな動きの「現実」感、一見そぐわない二つの見事すぎるマッチに衝撃を受けた。もちろん「アニメーション」とは沢山の絵が動いて出来上がるものなのだが、その絵の質感が完璧なまでに残っていた。いや、むしろCGを使うことでその質感を残したのだ。CGを使ってアナログに描く、こういったことはよく行われているのかもしれない、その辺の詳しいことはイマイチ解りきらないがこの短編のそれは完璧で本当に目を丸くして、食い入るように画面を眺めていた。

-リアルであり、理想であり、でもやっぱ魔法-


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誰でも、この映画のような経験をしたことがあるのではないか。もちろん紙ひこうきが駅に導くところではなく、「あ、この子が運命の子だ」と思うことだ。それが一目惚れでも、長い付き合いの中で気づいたことでも、この子じゃなきゃダメなんだと思うことはあるはずだ。そしてその出会いは決して運命的なんて言えるような劇的なものではない。「紙ひこうき」の場合はただ、駅で会っただけ。そんなことは日常茶飯事なのに、「あの子だけは違う」そう感じたのだろう。そしてしばらくは何も起こらない。魔法どころかむしろうまく行かなすぎて自分を呪いたくなるようにしか進まない。「500(日)のサマー」にも「運が向けばつき合う機会も会ったかもしれないが…」というようなセリフがある。誰かのことを好きになれば「運命」や「奇跡」なんてものに頼りたくなるもんだ。不安だからこそ、自分の思い通りに行かないと勝手に諦めてしまったりもする、「彼女は僕の運命じゃなかったんだ」なんて臭いセリフと共に。でも一方で、思わぬ方向で成功に続いたりするのも事実。映画館で会ったり、図書館であったり、意外と素の自分に戻った時にそういうことが起こったりするのが不思議。それは現実での紙ひこうきの魔法であり、またも運命と思える出来事なのだ。確かに、大量の紙ひこうきに引っ付かれて駅に連れて行かれることはなくっとも、似たようなことは意外と起きるもんなのだ。その絶妙な線引きとディズニーらしい魔法の物語が冴え渡ってるのが短編「紙ひこうき」

人は運命を信じたがる。その一方でそんなものはないんだと言い張ったりもする。そんなワガママを綺麗にまとめている気がした。無論、元からメルヘンな思考回路の自分にはハマらないわけはなく、大傑作として押している限りだ。アカデミー賞も獲った本短編をぜひ一度観ていただきたい。

-「だらしない」という意見も-


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『恋にうつつを抜かして社内文書を紙ひこうきにして飛ばす男なんてイヤだわ(笑)』(togetterより、一部抜粋)とか、意中の人への思いの強さを表現する方法についてのネガティブな意見が多数見られる。まあ、確かに仕事をちゃんとやるというのは大事なことだし、男としても必要な魅力のひとつになってくるわけだ。しかし、彼の場合どうだろうか。明らかに流れ作業の現場で、やりがいなんて一度も感じたことなかろう。きっと、大学を卒業して、なんとなく採用をもらった会社に進んだその結果があの退屈そうな仕事なのだ。日本ではどんな仕事でも、どんな環境でも「辞める」ことに対しては厳しい意見が飛んでくる傾向にあるが、多くの国では転職ありきでの就職だったりというのが普通にある。それは決してネガティブな意味ではなく、「自分の成長の為に」だったり「ここじゃ何も学べないと思ったり」とか様々ではあるが、「ここじゃない」と感じても尚その場で「頑張ってみる」、いやむしろ「頑張り続けてしまっている」のは日本の国民性なのかもしれない。そういった観点から見ると、ほぼ確実にわざと「退屈そう」に描かれたあの職場さえ「お前の仕事だろ」というふうに取られ批判されてしまうのだ。この「紙ひこうき」という短編は「運命の人」と幸か不幸か思い込んだその女性との出会いをきっかけに、自分の新たな職場、言い換えれば「運命の職業」を見つけるスタートラインにも同時に立ったのだ。こういったことは現実でも多分にあると思う。自身のことをよくわかってくれている相手は、自分の本当の夢だったりという目指すべき道を教えてくれたりするのだ。エンディングで二人が喫茶店にいる写真が一枚あった。そこで楽しそうに話す二人を見ると「君を追いかけるのに必死で、今まで退屈に思ってきた会社をついにやめてきちゃったよ」「フフ、バカみたい、でも嬉しい。一緒に仕事さがしましょ」なーんて会話が聞こえてきたり?(妄想癖)
つまり、「仕事をおろそかにするな」という意見はこの場合見当違いではないだろうか。あの仕事はむしろもっと前にやめるべきだった仕事で、彼女との出会いをきっかけにきっと辞められただろう彼の人生は初めてスタートラインに立ったのだ。だから、思う存分キュンキュンして欲しいんだな。そういうわけで、むしろ好きな人のために今を変えられる彼のことを賞賛さえしてもらいたいぐらいである。つい最近も仕事のせいで犠牲になった方がニュースで取り上げられていた。ここでもう一度「仕事を続けること」は必ずしも正義じゃないのだと思い直して欲しい。まあ、社会人生活が始まるのは来年の4月からのアマちゃん学生が何を言おうと、的を射たことではないかもしれないが。。。

短編のわりに長々と書いてしまったが、7分という短い時間に沢山のことが詰まった本作は一見に値する作品だ。ぜひに。






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