『Found/ファウンド』不条理の先の狂気は納得なようで自分が怖くなる。。。

Found/ファウンド

感想・レビュー

[評価]


■脚本:7
■演出:8
■キャスンティング:4
■この映画えらい度:5
■好き度:8
■期待値とのギャップ:6
■総合:7

64

/100

作品情報

原題:Found
2012/アメリカ 上映時間103分

スタッフ
監督:スコット・シャーマー
製作:レヤ・テイラーデイミアン・ウェスナー
原作:トッド・リグニー
脚本:トッド・リグニー

キャスト
ギャビン・ブラウン
イーサン・フィルベック
フィリス・ムンロー
ルーイ・ローレス
アレックス・コギン

[あらすじ]
兄が殺人鬼であることを知った少年がたどる運命を描き、トロント・アフターダーク映画祭最優秀作品賞をはじめ世界各国で映画賞を獲得した青春ホラー。ホラー映画が大好きな11歳の少年マーティ。学校でいじめられている彼にとって一番の楽しみは、家族の秘密を覗き見すること。母親がベッドの下にラブレターを隠していることや、父親がガレージの奥にヌード雑誌を置いていることを、マーティだけが知っていた。そんなある日、マーティは兄のクローゼットに人間の生首が入っているのを発見する。たまに新しくなる生首をこっそり取り出しては眺めるマーティだったが、ある夜、自分の同級生の生首があるのを発見し……。監督はこれが長編デビュー作となるスコット・シャーマー。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2017」上映作品。(以上、映画.comより)

こちらが予告編↓

-コメント-


この映画の本質は、「衝撃のラスト」を謳うサスペンスでもサイコスリラーでもない。冒頭、センチな音楽と共にナレーションで兄と生首について語られる。映画の最後を観客に提示するような形で始まるこの映画は例えば、ガンで死ぬ運命にある主人公とか、成功するまでを描いた映画とかそういった類いのものと構成は同じで、具体例をあげるならアルツハイマーになってしまうアリスの生涯を描く『アリスのままで』のような作品である。その中に猟奇殺人鬼という材料が加わったあくまで家族を描いたドラマなのだ。だからこそ、より重い!ホラー映画やスプラッター系の映画に比べ残虐描写と共に自己と重ね合わせずにはいられないディテールがちりばめられておるために、なんだか人ごとではないような気がするのだ。つまりこの『Found/ファウンド』は自分とは別世界の話と思っていた観客それぞれが、己れを省みて時に共感し時に反省する、狂気に振り切った兄を観て自分を再発見(Found)するという文学的なテーマを内包する映画なのだった。

『Found/ファウンド』自体は全くグロくない!


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この映画、「生首を部屋にかくし持つ兄」というセンテンスでサイコスリラー映画かと思っていたのだが、実際兄が殺人を犯す瞬間は映されない。生首さえ何度か出てくるものの既に死に、冷たくなったその肉の塊は声をあげることも、血を流すことももちろんないのだ。

この映画”自体”はグロくない、とはどういうことか。弟のマーティはホラー好きで、お化け屋敷や残虐描写の強い映画を好んでいる。別にそれが異質かどうかといえばそんな事はないだろう。子供の頃は誰もが興味を持っていて、怖いもの見たさで『本当にあった怖い話』等の番組を観た経験があるはずだ。その後、目を開けながらシャンプーをして激痛に悶えたのもいい思い出である。子供というのは無邪気で無垢で自分の想像外にあることにはどうしたって触れたくなる。そんな大多数と同じようにマーティーもホラー映画を見るわけだ。その中に兄の持っていた『Headless』という映画がある。


この映画は、男が人の首を取り、目玉をくり抜いて食べたり、切り口(首)に自分のイチモツをぶっさしてハァハァするという、どうにも理解し難い変態サイコキラー映画である。そして『Found/ファウンド』ではその殺人シーンを使い劇中劇的構成で観客に見せつけるのだ。この描写がエゲツない…。先ほど「兄が殺人を犯す瞬間は映されない」といったが、このビデオが兄の部屋にあったこと、兄の部屋に生首があること、ビデオと一緒に「一人目…○○分 二人目…○○分」というメモが入っていたこと。それらを鑑みて弟と観客はまさに兄が同じことをしているのだろうと悟のだ。『Found/ファウンド』自体では殺人描写は描かないが、兄の殺人を連想させる映画のシーンをふんだんに使う。弟と観客はまさに同じ状況下に置かれ、兄の犯罪に恐怖する。「実際には見る事はない家族の犯罪」というのは映画的ではない実にリアルでな構成で、観客を第三者(神の目)として位置づけず、むしろ家族の一員のような立場に置く事で「見えないという恐怖」を追体験することができる。だからこそ兄の狂気に恐れ、優しさに安堵し、そのギャップに疑問を抱く。一見スプラッター映画に見えるのに、こんなにも感情を揺さぶられるとは思わなかった。こういう「グロくないことの怖さ」、「見えないことの怖さ」を存分に味わえるのが『Found/ファウンド』である。

※ちなみに

『Headless』という映画は『Found/ファウンド』のために作られたものらしく、2015年にスピンオフとして一本の映画に仕上がっているようだ。

この世の不条理は最小単位の家族にさえ…


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学校でいじめを受けたり、唯一の親友だったやつにもあっさり裏切られる。仲よさそうに振る舞う弟マーカスでさえ親子関係には不満を感じている。自分にだけは優しく接してくれる兄にも『まだ兄貴でいたいのかな』なんて冷静で冷たい分析をしてみたり。人と人が付き合うことに対して決して肯定的ではないこの映画。そんな中で当然提示されるのは愛や希望なんかではない。『Found/ファウンド』では常に人生の不条理を見せつけられるのだ。

その最たるもので、私が一番苛立ったのがいじめっ子を撃退したマーティーを母が叱るシーンだった。ある公園で、神父らしき黒人の男が「忍耐」について説いていた。それを数組の親子が聞いているのだが、マーティーだけはこれ以上ないぐらい退屈そうにしていた。ついにしびれを切らしその場を後にするマーティを追って同級生らしき男の子がやってくる。そうして学校で持ちきりの「マーティーはゲイだ」という噂でからかうのだ。ついに爆発したマーティーはそいつの頭を何度も木に叩きつける暴力性を初めて見せる。言葉に暴力で対抗したことを責める大人たちは「暴力では解決しない、大人に話せ」とおきまりの文句で説教するのだった。彼らはマーティーの苦悩を知らない。母が真面目に話を聞いてくれないことも、幾度となく耐えてきたことも、彼自身、暴力はダメだと強く思っていたことも。大人たちはその瞬間だけを切り取って「暴力はいけない」と諭そうとするのだ。しかし、そんな言葉がマーティーに届くわけはない。なぜなら、暴力によって初めていじめを制圧することに成功したからだ。力により初めて自己防衛を完遂した彼にはむしろ達成感しかなかったろう。だが、そんな態度がより一層大人たちを怒らせる。かつてないほどに聞き分けが良くない息子に「がっかりしたわ」と母は説教を続ける。そして、マーティーは「兄と僕、二人の失敗作を作ったかあさんは母親失格だ」と言い放ち、相手の自尊心を打ち砕くのだ。まさに、マーティーが「ゲイ」とからかわれたように。それを聞いた母は一瞬の躊躇もなく、反射的にとでもいう速さで息子を叩いた。暴力はいけないという説教を、暴力により行ったのだ。この矛盾は実に苛だたしい。

詳しく書きすぎたせいで少し長くなってしまったが、こういった「人生って不公平だな」とか「道理にかなってないな」とかが物語の根底にあって、その先に暴力があるという実にシンプルな作りである。だからこそ、さっきまで共感していたはずの人物がとんでもない行動に出たりすることがとても恐ろしいのだ。ついさっきまで共感していたはずの人物の暴力性を見せられると、どうしたって自分の中にも存在するのではないかと不安になる。『Found/ファウンド』は人生の不条理に立ち向かいながらも、その暴力性について警告するような映画でもある。そういう意味では、いましめ的な映画でありながら、カタルシスもあるというすごく面白い作りになっていると私は思う。

-まとめ-


人の秘密なんていうものは暴くもんじゃないなと、単純だがそんなふうに改めて思わされた映画だった。その秘密はどんな理由にしろ隠したいから隠しているのである。それが本当の自分だからか、もしくはその逆か。映画という娯楽も多くの秘密を隠しているのだろう。今回のようにホラー映画が好きだったマーティーは、その残虐な映画的演出が隠していた現実の惨事を目の当たりにしてしまう。そしてその真実は、他のどの秘密とも同じように「知らなければ、見なければよかった」ことなのだ。彼が見てしまったものは、彼が好きだったものを嫌いにしてしまう。兄の秘密を知って、昔の兄が良かったと思うように、かつてホラー映画を楽しめた生活を渇望するのだ。だから、どんなに人生がつまらなくとも、人の秘密に首を突っ込んではならない。そんなことをせずに、慎ましく、自分の趣味や時に秘密を楽しめばいいのだ。私は、マーティーが望むだろう「ホラー映画を楽しく観る人生」を生きていこうと思う。

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