『LA LA LADN』夢を捨てた大多数にとってこそ響く映画

ラ・ラ・ランド

感想・レビュー

[評価]


■脚本:10
■演出:10
■キャスンティング:10
■この映画えらい度:10
■好き度:9
■期待値とのギャップ:7
■総合:9

93

/100


原題:La La Land
2016年/アメリカ 上映時間128分

スタッフ
監督:デイミアン・チャゼル
製作:フレッド・バーガージョーダン・ホロウィッツゲイリー・ギルバートマーク・プラット

キャスト
ライアン・ゴズリング:セバスチャン
エマ・ストーン:ミア
キャリー・ヘルナンデス:トレイシー
ジェシカ・ローゼンバーグ:アレクシス
ソノヤ・ミズノ:ケイトリン

[あらすじ]
「セッション」で一躍注目を集めたデイミアン・チャゼル監督が、ライアン・ゴズリング&エマ・ストーン主演で描いたミュージカル映画。売れない女優とジャズピアニストの恋を、往年の名作ミュージカル映画を彷彿させるゴージャスでロマンチックな歌とダンスで描く。オーディションに落ちて意気消沈していた女優志望のミアは、ピアノの音色に誘われて入ったジャズバーで、ピアニストのセバスチャンと最悪な出会いをする。そして後日、ミアは、あるパーティ会場のプールサイドで不機嫌そうに80年代ポップスを演奏するセバスチャンと再会。初めての会話でぶつかりあう2人だったが、互いの才能と夢に惹かれ合ううちに恋に落ちていく。「セッション」でアカデミー助演男優賞を受賞したJ・K・シモンズも出演。第73回ベネチア国際映画祭でエマ・ストーンが最優秀女優賞、第74回ゴールデングローブ賞では作品賞(ミュージカル/コメディ部門)ほか同賞の映画部門で史上最多の7部門を制した。第89回アカデミー賞では史上最多タイとなる14ノミネートを受け、チェゼル監督が史上最年少で監督賞を受賞したほか、エマ・ストーンの主演女優賞など計6部門でオスカー像を獲得した。(以上、映画.comより)

こちらが予告編↓

コメント


 「LA LA LAND」はシネマスコープの方式をとっている。横長のワイドスクリーンで、ミュージカルの黄金時代によく使われた方式だ。と言っても、その黄金時代生まれてもいない自分にとってはネットで仕入れた知識に過ぎないのだが。。。ただ、オープニングでいかにも古い仕様で打たれる「シネマスコープ」という文字。確実にかつてのミュージカルをリスペクトした作品に仕上がっているのだろうという期待が高まるのだった。
何よりも、これほど自由度の高い映画を見たのは久しぶりだった。「ミュージカル映画とはこうあるべきなのだ」、そんなふうに思わされる作品だった。最近は、ミュージカル独特の突然歌い出す違和感を和らげようとする努力がよく見れた。それをいいこととしていたのだが、「LA LA LAND」に魅せられて、必ずしもそうではないのだと思い知った。ミュージカルというのはもともと舞台劇の影を残したものだと思う。だからこそ、感情や状況を歌で表現したり、周りは暗転しスポットライトが当たったり、編集でないその場の演技で全てを表現するのだ。今作ももちろん歌い出し、踊り出し、主人公以外が擬似的にスローになったりと劇的要素満載で、回帰なんだがそれがある意味新鮮で上映中たまらなく感動した。そう、感情表現を、そして共感能力を高める手段としてミュージカルはベストな手段なのだ。

夢を追う二人、それを見る観客は何を得る人生か

(※結末に触れています)


 この映画のラストはハッピーエンドか、バッドエンドか。それは物語を観る観点によって変わってくるだろう。この映画は決して純粋なラブストーリーではない。夢追い人の二人の物語であってそこに恋のエッセンスが加わったという解釈の方が近い。だからこそ「LA LA LAND」のラストはハッピーエンドでもあるのだ。ただ、その理想を手に入れるための手段にはどうしても何かを失うことも必要なのだと誰の心にも響く形で示される。彼らが夢を追わずに二人で過ごすことを選んだもう一つの未来、そこには激しく恋し、常に笑っている二人がいた。しかしそれは同時に、別れてから初めて出会う「Seb’s」という名のバーもなんの変哲も無いものになってしまうのだ。二人が一緒に過ごす未来は、二人がお互いに夢を捨てることでしか実現し得なかった。思い出の曲とともに流れるそんな回想というか、妄想シーンはそれもまた喪失の物語なのである。恋か仕事か、そんな古来よりある葛藤はこの物語で昇華された。
 さて、この二人が切なくも理想の終わりを迎えたとするならば、観客の我々は何を捨て、何を得たのだろうか。私自身幼き頃はたくさんの夢があった。現実的なものから、そうでないものまで。もはや「現実的かどうか…」なんてことを考えてしまっている時点でミアやセブとは大きく違うのだが。そんな夢を捨てたのはいつのことかはわからない。何かきっかけがあったわけでもない。恋人のためでも、家族のためでもなく、なんとなく「叶わない」と捨てていたことに鑑賞後に気づいた。これは何よりも切ないことではなかろうか。もしかしたらなんの壁もなかったかもしれないその夢を、あっさり捨ててしまっていたことに自分でも驚愕した。それがどんなラストを迎えようとも、その個人にとっては貴重な経験になり、人生を形成する重要な核になるのに、自ら手放してしまったのだ。
 夢を追うことはとても勇気がいることで、不安もたくさんあることだ。さらにその実現には喪失もつきものなのだが、どんな終わりでも「夢を見ていた…」と笑顔で語れる最後を迎えたいな、とそんな風に思う映画だった。夢を追っている人、これから夢を追う人、夢を追い終わった人、それぞれに、それぞれのカタルシスがある話題作「LA LA LAND」、劇場で観ることをオススメする。その際はぜひIMAXで。シネスコのワイドスクリーンでも縦が狭く感じない大きなスクリーン、こんなIMAXを体験できることはそうそう無い。レンタル待ちはもったいない!終わってしまう前に映画館へ。

TOHOシネマズ 上映スケジュール

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2 comments

  1. この映画やっと見ましたよ。
    鑑賞後は外れない作品だなと思いましたけれども、やはり本作はフランスミュージカル映画の『ロシュフォールの恋人たち』と『シェルブールの雨傘』をハリウッド版にアレンジした作品だと感じました。ララランドは特にシェルブールの雨傘によく似ていて、一番の違いと言えば、フランスは終始愛を讃め称えるのに対して、アメリカはやはりドリームと成功を最終的に選択するという点です。なんか作品によって国民性感じたというかな。ララランドは本当にハリウッド色が高く、アメリカ的な映画だと感じました。
    ところで、この作品はシネマスコープ式をつかっているのですか?そんな決まりがあるんですね。笑 全く知りませんでした。笑 ユーチューブで撮影シーンを観ていたのですが、唯々唯々カメラワークは楽しそうだなと思いました。笑 勉強になります。
    P.S. 疑問にあるのは、クラシックなハリウッド映画のヒロインはドレスアップする時には大抵赤色系を着る傾向が高いが、本作のミアが着るドレスはどれも赤色系統ではなく、どれもやや寒色系に近い。パーティの最中もブルーのドレスだったことも気になる。これは唯々映画の中での配色的な問題なのか、それとも何か意味を持っているのか気になるところです。
    しかし、やはりいい映画ですな。

  2. ついに観ましたか!
    そうですな。監督も明言してたりするし、パンフレットにもたくさん関連ミュージカルが載ってたりする。まさにその2作品もそう。お目が高い。

    うん。特に今作は監督自身の伝記的な側面もすごく強くて、前作『セッション』は『ラ・ラ・ランド』でセブが組んだバンドグループと同じようなとこがあって。今作の元のゴリゴリのミュージカル映画を持っていったら『古臭い』と一蹴されたらしく、仕方なく書き直したのが『セッション』という話をどこかで読んだ。あくまで夢追い人の話。そのために犠牲は必要なんだと知らされて、特に得るものがあったわけでもない自分が夢を捨てたことに悲しくもなる。

    横長で広く映せるこのカメラもやっぱりミュージカル全盛期に多く使われたものなんだ。
    色に関しても、カラーが映せるようになったから『綺麗な原色を使おう』と鮮やかな色がたくさん使われたことを意識したもの。

    「青」に関しては個人の考察になるけども、やっぱり全体的に恋物語ではないあたり、心が折れたり、結構孤独に生きていたり(ひとり芝居も含め)と青に象徴されるイメージの強いミア。対してサブも全く同じで。ラストのセブズバーのネオンも青だったりする。こうみるとやっぱり2人は1人で(少なくとも青の印象が強い2人ではなく)生きていかなければ成功はできなかったのかな。と思います。

    ミアが成功するには彼女の色とは別の色を持った誰かと生涯を共にするしかなかった。その逆も然り。そんな風に思います。

    長々と失礼。

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